連城三紀彦『明日という過去に』幻冬舎文庫

ネタバレ注意。

二人の女の往復書簡で描かれる、愛憎と宿縁の謎。

書簡体ミステリという独創的な結構と、さすが華麗な文体とがあいまって、吸引力のある小説にはなっていると思う。

だけど中心にあるドラマがダブル不倫を中心としたあまりに通俗的で下世話なものだったし、それを取り巻いて書簡上の駆け引きとか、もう一人の「女」の導入とかいろいろテクニカルなことが凝らされても、策に溺れた印象もあってなかなかテンションは上がらなかった。

評価はC+。