京極夏彦『死ねばいいのに』講談社文庫

ネタバレ注意。

殺人事件の被害者となった女・アサミの話を関係者に聞き回る「知り合い」の男・ケンヤ。六人の男女がそれによって自らを暴かれ、その過程でやがて殺人の謎も露わになっていく。

辻村深月の解説に言い尽くされているところに馬鹿みたいな感想で申し訳ないけど、これは「深い」、いい小説だと思います。

ケンヤによって暴かれていく、大人の欺瞞や小悪の風景に、シニシズムや一種の爽快さを感じていると、やがて明らかになるアサミとケンヤの「物語」の衝撃に言葉を失うことになる。

それぞれリアルな卑近さをまとった大人たちの物語の中に、若い二人の真っ白な空白を象嵌して忘れ難い印象を残す。小説家としてのジツリキを感じる、巧緻な企み。

評価はB。

文庫版 死ねばいいのに (講談社文庫)

文庫版 死ねばいいのに (講談社文庫)