『最強のふたり』

@伏見ミリオン座
半身不随の富豪と、その介護人となる黒人青年との絆を描いたフランス映画。
フランス映画に対するイメージを覆し、脚本の抜群のテンポ感と陽性の演出で走り続け、ユーモアに笑い、またヒューマンな主題に感動しつつ、あっという間の112分。また優れて音楽的*1な映画でもあり、冒頭の「September」や誕生パーティのダンスシーンなど、ベタの誹りを恐れずに「楽しさ」の正道を行く潔さも清々しい。
フィリップのドリスに対する興味とか、死別した妻とエレノアに対する感情の整理、またドリスが倫理観を新たにする過程や家族との葛藤など、脚本的に十全に消化しきれていないと思われる部分もあるのですが、この映画に関してはそんな細部は些末事で、とにかく主演の二人の生き生きとした表情にすべてがあるのだと思います。物語とか、映画という構成体とはまた別の次元で、確かにそこに「生きている」と感じられる豊かな表情。『イル・ポスティーノ』を思い出しました。
原題「Intouchables」からこの邦題、最初疑問だったけど、観終わってからは腑に落ちました。この二人の俳優が起こした化学反応的なコンビネーションなしでは、ここまでの作品にはならなかったでしょう。確かに「最強」のキャストだと思いました。ハリウッドリメイクは、これかなりのプレッシャーだと思うな…。

*1:初めてフランス語の響きを心地よく思いもしました。