青井夏海『せせらぎの迷宮』ハルキ文庫

ネタバレ注意。
小学五年生の過去とアラサーの現在を行き来し、「卒業文集を誰も持っていないのはなぜか」という日常の謎を解き明かす「女子小学生ミステリ」。
「」に括った通り、小五女子の日常の活写に眼目があると思います。主人公の自意識も、多美子の(長じてもなおの)ウザさも、グループの気持ち悪さ(をステレオタイプにしない歩のキャラ)も、いずれもしっかりと細やかに、しかし物語の推進性を邪魔しない範囲でよく描けている。
今こうしてアラサー男子が読んでも馴染めない、気持ち悪い世界の活写。それがあるから、大仰なプロットやドラマが凝らされているわけでもないラストシーンが、ほんのりと「いい感動」になっているのかもしれませんね。
評価はB−。

せせらぎの迷宮 (ハルキ文庫)

せせらぎの迷宮 (ハルキ文庫)