『ブラック・スワン』

@109シネマズ名古屋
狂気に陥っていくプリマドンナを描いたサイコ・スリラー。
もっと文芸的な映画かと思っていたら、意外と真っ当にサイコ・スリラーしていてびっくりしました。端的に怖かったし、生理的に無理な場面も多かったです。爪剥がれるのとか俺ダメだし、ウィノナ・ライダーのあの役はキツい…。
基本的に登場人物に近く、主観多用のカットで迫力とスピード感は抜群、バレエ音楽を基調とした音楽効果も、作品に「本格」感を与えていると思います。ストーリィや登場人物造形は、芸術家の孤独・狂気を主題にしたスリラーとしては凡庸な部類ではあり、特にヴァンサン・カッセルの演じた演出家にはもうふたクセくらい欲しかったようにも思いますが、画、音楽、演技とそれ以外の構成要素が卓越しているので、見入ってしまいますね。
ナタリー・ポートマンの演技、張り詰めた狂気の表現も素晴らしいものでしたが、引っ詰めにした髪で、神経症的な表情の似合う「女優」然とした佇まいは、ぶっちゃけ僕をせつなくもさせました。今頃になってまでそんなこと言ってんのは気持ち悪いし、また凡庸だとも思いますが、僕の青春の映画ヒロインである、あのボブカットのマチルダは、もう見ることができないんだなあ、と。もしかしたら『レオン』以降早い時期に、映画史上最高のロリータ・ヒロインが誕生していたかもしれないと考えると*1、彼女が仕事セーブしてたのは映画史の損失だと思いますね。
わが青春のナタリー・ポートマンに、惜別の作品となりました。

*1:断ったっていう『ロリータ』リメイクじゃなくてもさ。