『アメリカン・サイコ』

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マンハッタンのヤング・エグゼクティヴ(?)である主人公が、内なる狂気に突き動かされて連続快楽殺人を犯す、サイコ・サスペンス。
サイコ・サスペンスとは言え、主題も鑑みればブラック・コメディに近い。巨大都市の虚栄において、ここに描かれるような狂気も、他と置換可能な匿名性と無関心の中で隠蔽されてしまうという、冷笑的な批評性。どんでん返しは鮮烈なものではないですが、それ故にじわじわとうすら寒い、なかなか稀有な余韻を味わわせてくれます。
クリスチャン・ベールは、「怪演」を志向してはっちゃけているけど、そうした中でも一抹の上品さが隠しきれないあたりが素敵。ウィレム・デフォーがもっと絡んでくれると、若干サスペンスとして凡庸さを感じさせる中盤が盛り上がったと思うけどな…。
いずれにせよ、「シニシズムにおいて評価されるべきサイコ・サスペンス」というのは貴重だと思います。名刺バトルのシーンとか、ブラック・コメディとしての本質が顕れた、なんともバカバカしい名シーンもありました。