松岡圭祐『催眠』小学館文庫

ネタバレ一応注意。
催眠療法と、多重人格がネタのサイコ・サスペンス。
小学館だし、もっと軽佻浮薄なエンタテインメントかと思っていたのだけど、意外とストーリィは地味。多く頁が割かれるのは、精神医療・カウンセリングの臨床場面における、様々な葛藤や倫理観といったもの。真面目な本でしたね、結構。
しかし作者がこれまで「催眠術師」としてメディアで垂れ流してきたイメージ…この本でまさに糾弾されるところの…を鑑みれば、「どの口が言うねん!」という話だし*1、そもそもストーリィがつまらないのとキャラクタに魅力がないのは、いかんともしがたい。というか、新堂冬樹的なチープな悲喜劇が、作品の啓蒙要素から説得力を奪ってしまっている、そんな印象。
評価はC。

催眠―Hypnosis (小学館文庫)

催眠―Hypnosis (小学館文庫)

*1:もちろん実相寺の設定なんて自嘲たっぷりだろうけど。