太宰治『ヴィヨンの妻』新潮文庫

ネタバレ一応注意。
家庭内読書会「古典的名作を読もう」企画、第八回課題本。
なんとはなしに「充実期」作品のようなイメージがあったけど(『斜陽』と同様)、実は死後発表のものも含まれる、最後期の作品集。
全体的に、凄く軽い。流麗な文章で物凄く読み易いし、基本的に瓢げているし。「親友交歓」なんて、ユーモアだけで成立してるような作品も。多くは駄目亭主による家庭の危機・崩壊が描かれているが、ちっとも重苦しくならず、流麗なままにさらさらと流れていってしまう。なんと言うか、もはやいろんな意味で「執着がなくなった」のかもしれないね。
多分に含まれる自虐自嘲の類は、しかしそうした「軽み」の中にあってしか受け入れられないものかもしれない。ふ、と一陣の風が通り過ぎ、後には何も残らなくて、ただその風はどこか心地よかったようで、なんとはなく物寂しい、そんな読書体験でありました。
トカトントン
評価はB−。

ヴィヨンの妻 (新潮文庫)

ヴィヨンの妻 (新潮文庫)