ネタバレ注意。
家庭内読書会「古典的名作を読もう」企画、第16回課題本。
18歳までにこれを書いて、20歳で腸チフスで死ぬという、まさに「夭折の天才」願望をかきたてられるラディゲさんですが、期待に違わない作品でした。彼の才能を見出して、イレ込んで、やがて喪ってからは阿片に溺れたというコクトーさんの作品より僕は全然好きでした*1ね。
少年が年上の人妻をNTRするお話です。話はそれだけでストーリィテリングに妙味はないけど、なんか読んでて漠然といい感じなのよね。もっと過度に退廃的だったり、前衛的だったりするのかと思っていたので、シンプルなストーリィと、そこに発揮される明晰さが新鮮で心地よかったです。
従容として死に直面するということは、一人の場合でなければ、問題になり得ない。二人で死ぬるのは、神を信じない人々にとっても、それはもはや死ではない。悲しいのは、生命と別れることではなくて、生命に意義を与えるものと別れることである。恋愛がわれわれの生命であるときは、一緒に生きていることと、一緒に死ぬこととのあいだに、どんな相違があろう?
(68p)
主人公の少年の大人びた造形は、どうしたって作者自身の投影と読んでしまうし、ナルシスティックな印象は不可避なものになってしまうけど、でもこの作品ではそういうナルシシズムも一歩引いて客観的に映しているようにも感じられて。硬質のナルシシズムとでも言うべきか。ラストのシニカルな余韻もいい感じでした。
評価はB−。
- 作者: ラディゲ,新庄嘉章
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1954/12/14
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 10回
- この商品を含むブログ (40件) を見る
*1:訳の問題も大きいとは思うが…。