森博嗣『有限と微小のパン THE PERFECT OUTSIDER』講談社文庫

ネタバレ注意。
家庭内読書会「森博嗣完全読破」企画、第11回課題本。
メインとなる事件のトリック自体は、モロにハウステンボスであるところの「ユーロパーク」という舞台立てと非常にうまく絡んでいて、飛び道具的ではあるけれど、俺的には結構好みの批評的プロットだった。
しかしこの作品の眼目は、言うまでもなく「あの人物」の存在感であろうし、初読時の残像ほどのインパクトはなかったにせよ、やはりそれは鮮烈だった。国内時差からの推理と場面演出は非常にダイナミックでロマンティックだし、瀬戸千衣さんの周辺描写は不敵すぎてニヤニヤが抑えられない。…愉しかった。
S&Mシリーズ完結編ということで、初読時は相応に気負って読んだ記憶があり、またその「重み」も感じて大傑作だと思ったけど、完結編の前に一応の、という留保がつくということを知っている今は、それほどの「重み」を感じられなかったのも事実ではあるけど。
まあでも、個人的な青春と不可分のこの愛すべきシリーズが、形を変えながらでも続いていてくれるのは嬉しいことであって。おそらく一旦区切りの小休止になるこの読書会シリーズも、またいつでも始められるという希望と共に。
評価はB+(再読)。

有限と微小のパン (講談社文庫)

有限と微小のパン (講談社文庫)