越前魔太郎(原作)/舞城王太郎(著)『魔界探偵冥王星O デッドドールのダブルD』講談社ノベルス

ネタバレ注意。
頼まんでも貸してもらえるので、舞城の新刊には苦労しません。
越前魔太郎」の「冥王星O」というシリーズは、舞城が中心になって角川(メディアワークス)と講談社でやってるプロジェクト。舞城と何人かのラノベ作家の連名・覆面ペンネームなのだけど、講談社ノベルスで御本尊が書くとなったら、背に腹変えられんかったんやね。苦しいクレジットになってるw
で、ストーリィは、人間と吸血鬼と人狼の抗争、その狭間でコウモリのごとく処世を図る「魔界探偵冥王星O」の口八丁です。吸血鬼や人狼を前に、役立たずだとソッコー殺されるので、存在価値証明のために思いつきの推理を垂れ流す、という、ある意味アンチ・ミステリ。「倫理観」云々は脇に置いて、ミステリを小馬鹿にしながらハチャメチャに展開するアクション・エンタテインメントです。
エンタテインメントに寄ってるので、読んでて難渋するようなことはなかったけど、なんか物足りなさも残る…いいのか悪いのか。あからさまに『占星術殺人事件』に批評的なメイン・トリックのアレンジはミステリ的に、その犯行を追ってく過程で犯人に追いついてしまうところはコメディ的に*1、それぞれ面白かったのですけど。
こうして見てると、この人の仕事をちゃんとミステリの流れの中に位置づける作業をしなければならないのではないかと思いますね。純文学の仕事の方が目立ってしまったこともあって、誰も触らないまま来てしまったような気がする。あるいは誰かもうやってんのかな、法月あたりに期待したいところだけれど。
評価はC。

*1:俺の頭ん中で、該円東雄作は完全に岩松了