青山真治『ユリイカ EUREKA』角川文庫

ネタバレ注意。
自身の監督映画のノベライズで、三島賞作品。
映画は以前観ました。ロード・ムーヴィーとしての印象が強かったので、なかなかバス乗らなくて焦ったり。こんな引っ張るっけね。
重厚なテーマに負けない、饒舌で肉厚な文体と、九州地方の方言の多用が、一種異様な迫力を小説にもたらしていると思います。単純に「インパクト」という話をするなら、俺には断然小説版でした。ぶっちゃけ映画は若干退屈だったんだ。
悲惨で哀しい話であるのに、重苦しく閉塞するばかりではなく、裏表紙に言うところの「癒し」「再生」が、そうした単語に拭い難く纏わりつくうそ寒さ、胡散臭さとは無縁に、力強く提示されているところ、なかなか得難い達成であると思いました。
以下のセリフは、まさにそのハイライト。

「弓子、」と、沢井はだからこそ訊いたのだった。
「他人のためだけに生きるちゅうとはできるとやろか」
(201p)

評価はB。

ユリイカ (角川文庫)

ユリイカ (角川文庫)