貴志祐介『十三番目の人格 -ISOLA-』角川ホラー文庫

ネタバレ注意。
多重人格ネタのホラー小説。
地震臨死体験、多重人格と、この小説を構成する要素はなかなかに多彩だが、それぞれがうまく噛み合っているようには思えなかった。主人公由香里のキャラクタも生硬だし、そんなインプレッションだからもちろん真部*1とのロマンスにも惹かれない。そもそも性急すぎて感情移入できない。ホラーとしての主眼であるだろう《ISOLA》の正体についても、「え、その程度の情念怖い?」って感じで凄味を感じられなかった。
全体的に散漫で、イマジネーションを感じられない小説だった。初期作品ということもあるだろうけど、やはりこのテの「硬い」筆質はあまりホラーには向いてないんじやないかと思う。近年本格ミステリの作例も多くなってる作家だけど、そっちのが向いてるように思うな。つっても俺はそっちもあんまり好きじゃないんだけど…今までで一番面白かったのがデスゲーム小説*2ってのも、作家の筆質と作品傾向、それに個人的嗜好の観点から興味深いとは思う。
評価はC。

追記。そういや『新世界より』ってイマジネーション炸裂の傑作もあったな…。

*1:映画版のキャスト石黒賢と知ってしまってはさらに…。

*2:言うまでもないけど『クリムゾンの迷宮』ね。