古泉迦十『火蛾』講談社文庫

ネタバレ注意。

イスラム神秘主義修行者の世界と、そこで起こる殺人を描く、伝説のメフィスト賞受賞作。

なにしろ四半世紀近くぶりの再読なわけで、内容すっかり忘れてたけど、改めて読んでプロットも世界観も野心的。純粋かつ異形の本格ミステリとして独特の存在感を放っている。しかしぶっちゃけ『鉄鼠』の全きストイック版のようなイメージで、あの圧倒的ストーリィテリングをないものねだりしてしまう部分はあるが。

しかしコレが文庫化されて、さらに待望久し過ぎて完全に諦めてた『崑崙奴』のドロップ予告、さらには『鵼の碑』まで読めるなんて、2023年どぉなっちゃってんだよ、滅びるんちゃうか世界、なんて思うよね。ノベルス版の蔵書が意味を失くしたことぐらいどうってことないね。

評価はB+(再読)。