柴田よしき『象牙色の眠り』文春文庫

ネタバレ注意。
処分銘柄読書を始めてから、散々読んできた柴田作品ですが、コレはいい部類の作品です。『少女達がいた街』かコレか、という感じ*1
京都の郊外、退廃にまどろむ富豪の邸宅に展開する「家政婦は見た」。全体に抑制の効いた筆致で、小出しにされる各人の抱えた謎と秘密。若干恩田陸的な風情があるので好きだったかも。
ミステリとしての大きなプロットも野心的で、新聞にボールペン挟むとことか細かいとこも小粋なトリックがあって。でも瑞恵の直子に対する激情がいまいち飲み込めない*2とか不満もあるし、完成度とカタルシスは並程度と思う。でも解説でも触れられてる「ねむり姫」メタファの処理がラストで逆説的にキレイに決まっていて、うまく「まとまり」をつくっていました。
うん、佳作と呼ぶにぴったり。考えられた作品です。
評価はB。

象牙色の眠り (文春文庫)

象牙色の眠り (文春文庫)

*1:解説の法月と同意見。るん♪

*2:もっとクールでいいと思うのだけど。でもそれもオトコ目線だからということで糾弾されてしまうでしょうか…南無。