ネタバレ注意。
海上タクシー<ガル3号>シリーズの長編。瀬戸内を舞台に、反目し合う二つの島の縁起の謎と、派生して起こる連続殺人に、海上タクシーの船長・寺田が挑む。
うん、前に読んだのがいまいちだったので(そっちはシリーズじゃないけど)期待してなかったのですが、これはよいものでしたね。冒頭、謎の乗客たちに瀬戸内海引っ張り回される謎めいた展開とシー・チェイスのエンタメ性、島々をめぐる民俗学的な興趣で惹き込まれるし、抑制の効いたドライな筆致と、その中から浮かび上がるキャラクタの魅力、寺田の家族絡みのドラマなどには、ちょっと毛色の変わったハードボイルドとしての妙味があります。特に越智一江さんのキャラクタは印象的で、それが終盤の展開の、息もつかせぬスリリングさに大いに貢献していると思いました。このキャラには相当手応えあっただろうな…映像化するならキャストは誰で、なんて想像するのも愉しい、立ったキャラです。
小説巧者の職人芸が愉しめる、オリジナリティ溢れる佳作です。
評価はB。
- 作者: 多島斗志之
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/07/22
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 1回
- この商品を含むブログ (15件) を見る