P.オースター/山本楡美子・郷原宏(訳)『シティ・オヴ・グラス』角川文庫

ネタバレ注意。

家庭内読書会「古典的名作を読もう」企画、第13回課題本。

…まあ古典作品ではありませんが、オースターの小説デビュー作だし、前『ガープの世界』もやったしさ、いいよね。

さて、独特の幻想性を湛えた探偵物語です。面白いです。「依頼人*1の異常な過去とか、「追跡対象」のドッペルゲンガー(?)が突然現れるとか、その行跡を辿るとアルファベットになってて、「THE TOWER OF BABEL」と綴っているとか、そのほとんどは放りっぱなしだけど、ブッ飛び方に「ウェルメイドな舞城」を感じてテンション上がりました。「ポール・オースター」が登場したりするメタフィクショナルな構造は落ち着かないけど、ラストに至っての主人公の行動様式なんかいかにもオースター的で、なんかホッとしたり。

柴田元幸訳で読んだらどうなのだろう*2という思いはありますが、そうではなくとも水準以上の佳作と思います。郷原宏は書評家としてのイメージが悪いので、訳のクレジットには違和感があるのですが。

評価はB。

*1:《ミスタ・悲しみ》ってのは、スネオヘアー「悲しみロックフェスティバル」の元ネタであろうか。

*2:後から調べたら出てるじゃん…。新潮社『ガラスの街』…。