柴田よしき『貴船菊の白』新潮文庫

ネタバレ特になし。
この前に読んだのが酷かったので、少なくともまともな文章が読みたくなったのです。
京都の風物に材を採ったミステリ短編集。『桜さがし』と違って今回はノンシリーズだけど、やはり読んでる間の感覚は似てますね。京都のいい雰囲気、紀行趣味がくすぐられます。京都モノはライフワークでしょうか? そういえば京都在住なんでしたっけ、この人は。
特に「銀の孔雀」と「躑躅幻想」あたりが、夢幻的な心地もあって読ませる作品です。赤江瀑とか、皆川博子あたりから毒気を抜いたような。しかしそれぞれの作品にカタルシスはあまり求められず、僕の求める短編ミステリとは若干志向は異なりましたね。解説で「まずは女性読者のために」という作者の宣言が引かれているように、僕みたいなのは第一に想定される読者じゃないんでしょうね。
…でもまあ、及第点の小説をコンスタントに読ませてくれる作家だと評価しています(偉そう)。『象牙色の眠り』と続けて二作好みの作風だったので、好感度も高くなりました。
評価はB−。

貴船菊の白 (新潮文庫)

貴船菊の白 (新潮文庫)