浅野いにお「おやすみプンプン 5」小学館ヤングサンデーコミックス

翠さん…。
翠さん…翠さん…好きだったのに翠さん…。
…まあこうなることは分かっていたのだけど。ただやるだけならまだしも、別れ際のセリフとプレゼントの中の手紙!! いままであらゆる表現媒体を通じて、こんなにも「欺瞞」そのものを表現し得たセリフがあっただろうか(泣)!! ≪…大好きだよ。≫じゃねえんだよ浅野ぉぉ!!
…とにかくもう、画もネームも、暗黒のリリシズムが冴えわたり、いよいよ手のつけられないことになってきている第5巻。読み終わってしばらく呆然としてしまい、やがて吐気に襲われた。こないだの『1Q84』とはまったく異なる意味において。単純にショックで。『ソラニン*1から読んだ人がこっち来たらトラウマになるんじゃねえかと思う。
この感情への浸食作用は、『世界の終わりと夜明け前』の時に書いたのとはまったく異なる、天才・浅野いにおの能力を示しているけれど、それを俺は言語化することができない。なんて書いても安っぽく思えてしまうし。…つーか、プンプン犯してる時の翠さんのツラ見てたら全部飛んじまったよ!! …完結の頃には、何か言えるようになるといいなあ。
でもさ、雄一おじさんパートのラスト、あんだけ気合い入って美麗な「画」描いておきながら、結局それは救いでもなんでもなくて、彼はそのまま壊れて退場、翠さんによって極限まで矮小化される、という展開に最も殺気立った才能を感じる。ヤバスギルスキル。前回「こいつらの欺瞞だらけの幸福にいったいどんな悲劇が待っているのか」なんて期待を書いてたけど、ここまでのものは求めてなかったのにw
とにかく現在、日本で最も天才の名に相応しい作家であることは間違いないだろう。次の巻、高校生編、怖すぎる。

おやすみプンプン 5 (ヤングサンデーコミックス)

おやすみプンプン 5 (ヤングサンデーコミックス)

*1:映画化おめでとう。でもあおいは違うよね。加藤のキャスティングは予言通り。