『ソラニン』

試写会@名古屋市芸術創造センター
ひょんなことから招待券をいただいて、試写会というやつに生まれて初めて行きました。
好きなマンガを好きな女優で映画化するということで、期待も不安も大きいままに。
で。
…うーん。
「原作の方がいい」なんて映画を評するにまったく無意味なので使いたくないんだけど、それでもやはり、原作を凌駕してすぐれた表現というのは見出せませんでした。強いて言うならアジカン後藤による劇中歌「ソラニン」の出来が素晴らしい、ってぐらい。キャラも台詞も忠実に作ってあると思うけど、結局浅野節っちゅーのはマンガでこそ、あの絵柄でこそ、という表現なのだなあ、と思った次第。
映画にしてしまうと、モノローグや会話の味わいが消えてしまうなあと思ったんだよね。一編のシナリオとして観た場合、台詞は直接的なのに全体の流れは冗長、というちょっと厄介なバランスになっているように思いました。骨格だけ取り出したら、単なる青春モラトリアムストーリィなんだよね。「映画」としてはそれを引っ張っていけてないから、原作の「漫画」としての価値が逆説的に示されているようにも思います。でも、《すっごい好き!!》(原作1巻20p)とか、《冷たい風が/昨年よりもずっと無意味に吹いて、》(原作2巻33p)とか、(個人的に)重要なモノローグが捨象されてたのは残念だったな。
懸念材料だったサンボ近藤の演技はむしろよかった。高良健吾も悪くなかったけど(特に原付号泣シーン)、なんかサンフレッチェの槙野に似てるなあと思ってたらそればっかり気になってしまったりし。あと伊藤歩はやっぱこの中だと一人役者が上手ですね。うん、で主演女優の魅力ってのもあまり出てなかったように思います。まだ代表作、『少年メリケンサック』より更新されず。
ああそうだ、entの音楽はよかったです。サントラ買うまでじゃないけれど。ただこの映画の凡庸なセンチメントの「画」を、煽ってしまったような感じもあるのですが。