真保裕一『ホワイトアウト』新潮文庫

ネタバレ注意。
流行的にも季節的にも、「今さら!?」というツッコミは黙殺します。
映画化もされたこの冒険小説、まあ分厚い本ではあるのですが、読むのに一週間を要しました。僕にとっては珍しいです。単純に、「なんだコレつまんねーなー」と思いながら読んでたからでしょうけど。
というわけで酷くつまらなかったのですけど、欠点は容易く指摘できる部分にあって。この作品は叙述のバランスが非常に悪いと思うのですね。テロリストにダムが占拠される話で、主人公はその豪雪に閉ざされたダムでのたうちまわるのですが、その事物や風景のディテールは必要以上に執拗に描写され、冗長をしかもたらしていない。しかしその一方で、主人公やヒロイン(?)、テロリストたちの心情描写や感情の交換は異常に性急で、「いや、そりゃそうだろうけどもっと慎もうよ」って感じ。置いていかれるわけじゃないけど、焦り過ぎの印象。
どれだけ描写されても頭に像を結ばないダム施設の風景に辟易しつつ、真剣に感動を演出しようとするほど迫真性を失っていくト書きのドラマに苦笑して(笠原の最期は酷い)。不幸な読書体験でしたわ。
評価はC−。

ホワイトアウト (新潮文庫)

ホワイトアウト (新潮文庫)