桜庭一樹『少女七竈と七人の可愛そうな大人』角川文庫

ネタバレ一応注意。
「異形としての、あまりにも美しいかんばせ」に生まれついてしまった少女を主人公にした青春小説…なのか? これは。少女…七竈に関わりあうひとびと(あるいは犬)を、様々な視点から描いた連作短編のような形式。
瑞々しい文章、適度にファニィで古びた色彩、旭川の街の静謐といった、小説の世界観の構築も素晴らしい手腕と思うが、突拍子もない設定で筆を起こしておきながら、主人公・七竈と、彼女に関わりあう「大人」たちとの交流、感情の交換には、なにかとても普遍的な感動が宿っていて、それがとても美しいと思うのです。
とんがっただけの少女小説でもなければ、凡庸なビルドゥングス・ロマンでもない。「桜庭ワールド」とでも呼ぶ以外にない、良質な物語。
毎度美しい鈴木成一のデザイン、いい具合に前のめった古川日出男の解説まで含め、呪われた少女を描いたこの小説は、なんとも祝福された本として仕上がっている。
評価はB+。

少女七竈と七人の可愛そうな大人 (角川文庫)

少女七竈と七人の可愛そうな大人 (角川文庫)