柴田よしき『少女達がいた街』角川文庫

ネタバレ注意。
角川からのリリースではあるが、村上緑子シリーズとは大きく趣の異なるノンシリーズ長編。その後の作者の、多彩な、もっと言ってしまえばやや節操のない作品展開を知っているので驚きこそなかったが、発表当時のことを考えれば冒険であっただろうし、読書子にも新鮮さをもって迎えられたであろうことは想像に難くない。リーダビリティの多彩は評価されてしかるべきだろう。
「大きく趣を変える」のは、大きく前後半で構成を変えるストーリーラインもしかり。前半は1970年代、渋谷に集う少年少女を、「ロック」を中心にして描く青春小説として。そして後半では現在の視点から、それにもたらされた「破局」に関する、サイコサスペンスじみてもいる謎解きへと。
前半部は、どこか佐々木丸美にも通じるような、独善的オトメチック過剰の気もありつつ、しかし優れた風俗小説として「少女たち」が生き生きと描き出されている。近影を見る限り恰幅のいいおばちゃんというイメージの作者だが、彼女の青春時代はこういった感じだったのであろうか。「A学院」とはおそらく出身の青山学院であろうし。なんかドラゴンアッシュとか、アオガクの高等部に畏怖に近い都会のイメージがある俺。
事件の真相は笑ってしまうぐらいに昼メロ的なものだが、前半の活写からの展開が鮮やかで、それも受け入れさせられてしまうから不思議だ。個人的な嗜好の話をすれば北浦の設定*1がモロ好みで、絡ませ方が巧いとも思った。なかなかの佳作です。
評価はB。

少女達がいた街 (角川文庫)

少女達がいた街 (角川文庫)

*1:女子高の臨時講師をしている院生で、活動家だって。カッコイー。