『ラーメンズ第5回公演 「home」』

第5回公演、DVD化なる。

ラーメンズ初のパッケージ化された作品でありながら、発売元の倒産という憂き目にあい、幻の映像とされていた第5回公演「home」。そのへんの大人の事情を、ポニーキャニオンが何とかしてくれました!
(ジャケット裏より)

とのことです。わーい。
2000年の公演作品ですが、既にしてラーメンズのコント表現は、高い完成度においてその先進性を顕しています。衝撃のアカデミック・コント「読書対決」、アヴァンギャルドと単純バカの同居する「縄跳び部」はその双璧でしょう。この二つはベストDVDでも中心的な役割を担っていましたね。
その他にも現代人の強迫観念を批評的に描いた「無用途人間」、演劇的なアプローチで善悪の彼岸を行き来する「100万円」など、名作揃いです。演劇性が強すぎて、笑いの絶対量の物足りない作品もありますが。アホみたいに大仰な批評ですが、この頃の彼らの作品にはこうした形容がよく似合います。
また、特に懐かしかったのは「映画好きの二人」。彼らの衝撃を初期の「オンエアバトル」で初体験した頃。もうお笑いなんて「ごっつええ感じ」だけで十分だと思っていたのに、新世代はこんな天才を産み落してしていたのか、と私的第二次お笑いブームが巻き起こった頃。中心を担った、ラーメンズおぎやはぎ、そして初期「はねるのトびら」。大いなる期待をもって見守ったチャンピオン大会で、彼らがかけたのがこのネタでした。アパートの一室で、「映画好きの二人」が繰り広げる、ハリウッド映画のステレオタイプ小芝居。明らかに爆発力に欠ける、でもクスクス&ニヤニヤ笑いは止まらない、その選択じたいがミスチョイスであることも含め、とても愛おしいネタでした。案の定彼らは惨敗しますが、特別審査員の談志師匠が授けてくれた特別賞に、僕は溜飲を下げたものでした。今回テレビの制約を取り払ったさらに長尺のフルバージョン小芝居を観て、ますますこれでチャンピオンは無理だなあと思うのでしたw
あの頃、その後の「お笑いブーム」の萌芽を見せていた芸人たちも、あるいは消えていき、あるいは「ブレイク」の過程で変質を余儀なくされていきました。それが仕方ないことだとはもちろん分かっていながらも、僕はたとえば「あの頃のはねるはマジでおもしろかったんだよ」といった言葉を心中呟かざるを得ないのです。現在のさらなる「若手」にも、僕は十分な魅力を感じていますが、僕が属する「お笑い」世代は、2000年代初頭のあの時代にあり、それはごく一部の例外を除いてもはやセンチメントの対象になってしまいました。
しかし、いまだブログにお笑いのカテゴリを設けているのも、その「例外」があまりにも大きく、そして多方面への広がりをもった存在だからです。まったく何にも阻害されず、自由で先進的で、そして誰より愛おしい。ラーメンズがずっとそんな存在であり続けてくれていることは、本当に稀有で貴重で、そしてこの上なく嬉しいことです。
懐かしさのあまりなんだか変にセンチメンタルなレビューになってしまいました。単独公演も数を重ね、四月からは17回公演がかけられます。名古屋公演のチケットは抑えました。多分六年ぶりぐらいのラーメンズライヴです。『Tower』、楽しみです。

ラーメンズ第5回公演『home』 [DVD]

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