ネタバレ一応注意。
期待してなかったけど、意外とよかったのです。
ジャンキーの少年たちだけが住む治外法権の島、「ネバーランド」を舞台にした、パンキッシュなSF。ドラッグと言語ヘゲモニーを媒介に、意識の変容や共振・支配、さまざまな幻視と感覚の先鋭が描かれる。
驚愕に開いた少年の口腔から、崩れた豆腐のような白い塊が吐き出された。成長する粘菌のように姿を変えるそれは、何十という嬰児の小さな手を中から生みだした。蠕動する白い嬰児の手は空を握り、離し、伸び、縮み、その一部が白い塊のなかに溶けて消えると、そこから苦悶の表情が浮かび上がってきた。苦しみ悶える曖昧な輪郭をもった男の顔は、嬰児の腕を振り回しながら天井へと向かい、銀の天井にへばりつくと、その中に消えていった。
(「ドッグ・デイ」、96-97p)
なかなか凄いイメージ。
下手にやったら完全にグズグズになってしまい、小説として成立させるのが難しそうな題材だが、よく描けてると思う。舞台にも、キャラにも、イメージにも、ふわふわしてない存在感がある。硬質でいて同時に艶めかしくもある文章力と、確かな構成力の故だと思います。ちょっと山田正紀を思い出した。
短編として見たベストは「モダーン・ラヴァーズ」かな。SFとしての評価はまた違うかもしれないけど、ポリス・コンビのキャラがオフビートな感じでなんかよかった。
評価はB。
- 作者: 牧野修
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1996/02/01
- メディア: 文庫
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