島田雅彦『僕は模造人間』新潮文庫

ネタバレ特になし。
なぜか新潮中心に揃っている島田雅彦
いっそ分裂病的な主人公の自意識の暴走を、生い立ちから青春期に沿って。軽薄に慇懃だが、やはり洒脱な一人称で描く、青春小説…なのだろう、これは。

「中学では何か一つのことに打ち込みなさい」という父の言葉をうけて、僕は何か一つのことに熱中する奴を茶化すことに熱中した。
(42p)

…そんな読まれ方は想定していないだろうけど、笑えてやがてちょっと哀しくなった。青春の狂気、まったく手に負えないんだ、自意識ってやつは。
まあ主人公のブッ飛び方が極端なので、普通にスラップスティックとして読んでいいのではないかしら。そうして読めば実際、笑えて愉しい。
金子國義の装画も素敵ね。
評価はB。

僕は模造人間 (新潮文庫)

僕は模造人間 (新潮文庫)

…書影ねえけどな。