ビル.S.バリンジャー/大久保康雄(訳)『歯と爪』創元推理文庫

ネタバレ一応注意。
気を取り直して、サスペンス本格のクラシック。
この文庫本でも袋とじにされている、サプライズ・エンディングで名高い作品です…が。やはりこのテの「サプライズのプロットにおけるクラシック」に関しては、それをこねくりまわした現代本格をさんざん読んだ後に読んでも、当時の読者が驚愕したであろう新鮮なインパクトを得ることは難しいのですよ。
それでもこの小説は、主人公の設定に始まり、ハードボイルドな復讐譚と法廷シーンを繰り返すというストーリーテリングの構造など、シンプルに洗練された手法でトリックを最大限効果的に見せる「完成」を既に示していて、そうした洗練を楽しむことができます。そうした「読み」は、むしろ後続が担うべきだと思うが。ぐいぐい読めますし、やはり名作ではあるでしょう。
評価はB。

歯と爪 (創元推理文庫 163-2)

歯と爪 (創元推理文庫 163-2)