ネタバレ特になし。
このような個人ブログにおいて、商業出版物を思うさま罵倒することの行儀の悪さや、「だったら読まなきゃいーじゃん」という非難が一定の説得力を持つことは承知のうえで。
以前ハードカバー版を図書館で借りて読んだ時に、一話目のあまりにものツラさに、その冒頭の短編一本をさえ読み通すことができずに放り投げ、軽いトラウマになっていた作品でしたが、清涼院に続いてなぜかマゾ的感性に憑かれて頑張ってしまいました。やっぱり最初はとてつもなくツラいけど、やがて「どうしようもねえな」という諦念と共にやり過ごすことができるようになってくる。
これはある種の偉業である。小説を、そのあらゆる構成要素においてこうまで「サムく」作り上げてしまうということは。登場人物もれなく全員の、思考、思想、行動、言動、背負わされた物語、あるいはそれをとりまく事象の描写。そのすべてが、大仰で、空疎で、結局収斂するところではあまりにも稚拙だ。「「日常の謎」をナメんなよ」ってぐらいのプロットの不備不足、あるいはBL的な感性がもたらす嫌悪感なんて、この拙劣の前にはほとんど意味をなさないとさえ感じられる。北村薫や加納朋子なんて、この作品*1を語る俎上に名前を出すだけでも失礼だ。
人が人を思いやるということ、あるいは人と人とが心を通い合わせるということ、そうした「こと」を真っ当に描こうとしたならば、こんなに寒々としたものになるわけがないと思うのですが。
不思議です。
評価はD。人生最低レベル。
- 作者: 坂木司
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*1:あえて「作家」とは言わないでおこう。またマゾっ気出た時に化けてるかもしれないし。