ネタバレ注意。
巨匠セイヤーズの長編第一作にして、貴族探偵ピーター・ウィムジィ卿の初登場作との由。
まあ…現在において読んでみて、「黄金期本格」としてのクオリティはみとめられない作品ではありました。真犯人最初からバレバレ、不可解状況の必然性が「捜査の攪乱」レベルにとどまり、ロジックではなく状況証拠の恣意的な開示において犯人同定が行われる…などなど。
それでもすいすいと読めた一助として、「名探偵」を食って明敏なる活躍を見せる従僕キャラ、マーヴィン・バンターの存在は疑いのないところです。これは非常にいいキャラで、もっとモダンな感性であれば、ウィムジィ卿は張り子として、こっちを探偵役に据えるところだが…って、確かに最近いろいろ作例あるな。これとかこれとか。
「何だか時々、マーヴィン・バンターに遊ばれている気がする」
(204p)
とかって、躁病質の中にも自覚のある、ウィムジィ卿のキャラも面白いんだけどね。
評価はC。
- 作者: ドロシー・L.セイヤーズ,Dorothy L. Sayers,浅羽莢子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1993/09/24
- メディア: 文庫
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