小林多喜二『蟹工船/一九二八・三・一五』ワイド版岩波文庫

ネタバレ一応注意。

「地獄」の環境で働く漁船労働者を描く「蟹工船」は、独特の群像話法がグルーヴ感を生んでいて、なかなか他に類を見ない作品。時代性を色濃く映しながら読み継がれているのは、主題の普遍性と共に、文芸芸術としてのオリジナリティのゆえだなあと感じ入った次第。

「一九二八・三・一五」は、同日の一斉弾圧…「共産党事件」における、北海道の活動家たちの受難を描く。こちらは比較的大人しめの筆致だが、それがまたうすら寒い。この後に作者を襲う悲運を思えば、厳粛な気持ちで読まざるを得ない…。

記録のみ。