辻村深月『名前探しの放課後』講談社文庫

ネタバレ注意。

主人公の高校生・依田いつかが過去にタイムスリップし、クラスメイトの自殺を食い止めるべく仲間たちと奮闘する、青春ファンタジック・ミステリ。

この大長編、「企み」が明らかになってからの展開は、プロット的にもエモーション的にも一気呵成で、素晴らしい盛り上がり。そこに至るまでも総じて高いリーダビリティは発揮されている。しかしやはり、小説の端々で、「よくできたお話」「キャラと挿話の掘り下げ」に向けた計算を、小癪に、鼻について感じざるを得なかった。こんなコいいでしょ? こういう複雑さも青春だよね? ってしたり顔されてる気がして。

少なくとも天木の存在意義を感じられなかったし、秀人と椿もちょっとなあ…他作品との連環も、思い入れを感じるにはあまりに過去の読書に過ぎた*1。坂崎あすなは、物語に果たす役割に見合って印象深いキャラだったけど、それだけに不用意なセリフ…《「だけど、ありがとう。河野くんって、最初思ったより随分感じいいね」》(下巻52p)とか…吐かせるのやめてほしい。こういうので著しく醒める。

まあ、つばさの連結描いてくれたので、+つけとこう。

評価はC+。

*1:自分の積読の酷さが原因なので、作者の自意識過剰とは言うまい。