栗原康『村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝』岩波現代文庫

ネタバレ一応注意。

あなたは一国の為政者でも私よりは弱い
(144p)

伊藤野枝の評伝。

やべー、めちゃくちゃ面白かったわ。野枝のブッ飛びかたがまずかっこいいのに、栗原文体の独特の疾走感が、それに思うさまブーストかけてる。

ラディカル・フェミニストとして筋の通った、かっこいいとしか形容できない思想と生き方。周辺の群像も素敵で、辻潤の追悼文(38p)とかも最高だし、冒頭に引いた鬼のような啖呵を吐かれた後藤新平が、その後で果たした役割のエピソードにも泣けた。

寂聴の小説にはなかった、爽快さ、痛快さのある快作でした。ここ10年見た中で、最も俺にブッ刺さってきたタイトルだったけど、中身の方もそれに劣らず。

評価はB+。