瀬戸内寂聴『諧調は偽りなり』岩波現代文庫

ネタバレ注意。
甘粕事件による終局までを描く後編。
『美は乱調なり』に比べて、群像劇的な興趣が前面に立つようになって、その分個人的には興味深く読んだ。武林無想庵とか寡聞にして初めて聞いた名前だったけど、辻潤との比叡山籠りとか面白かったわ。後はやはり甘粕が満州引き揚げの前に「宝石」を配ったエピソードはよいな…こういう生々しい証言がもっと読みたかったけれど。
しかし甘粕事件の顛末は軍、法曹含めてクソすぎて絶句する…現代だって笑ってられる状況じゃねえってのがさらに寒々しさを煽ります。
評価はB。