ネタバレ注意。
廃寺の苔の上に置かれた赤ん坊、「なにか」の成長と、その特別な歌声と共に描かれる、日本、関西の地に奔る音楽とイメージのファンタジィ。
既読のいしい作品の内でも、最も尖ったものであることは間違いない。イメージのオリジナリティ、それを表現する比喩の鮮烈、いずれも先鋭化している。
芸術点の非常に高い小説で、読者に求められているレベルも高い。個人的には、いしい作品らしい柔らかさや可愛らしさ、そこから派生する感情移入に乏しくて、飲み下しにくいばかりであったことは不徳の致すところ。
評価はC。