ネタバレ一応注意。
様々な「よはひ」に生きるヒト、モノ、コトたちを描き出す連作集。
感性の豊かな、オリジナリティに溢れたイメージと文章表現、という美質は変わっていないけど、以前よりどうも物語に没入できないような印象がある。文学としてより高次を志向しているのだろうけど、かつての親しみやすく、かわいげのあった物語、キャラクタたちを懐かしく思ってしまう。それだからミもフタもない悲劇がより衝撃的だったような…。
『悪声』もそうだったし、他の作家では古川日出男にも感じるけど、作家の進化に置いて行かれているようなこの感覚、読み手としての劣化だとは思いたくないなあ。
評価はC+。
- 作者:いしい しんじ
- 発売日: 2019/12/19
- メディア: 文庫