古川日出男『聖家族』新潮文庫

ネタバレ注意。
青森の名家・狗塚家に生まれた三きょうだいの彷徨と、それに連なって語られる「妄想の東北史」。
圧倒的なテンションと濃密なディテール、歴史や地誌を食らい尽さんとする獰猛さ。神話の名にも相応しい、凄味を湛えた作品だとは思うが、正直言って俺はついていけなかった…。文体は先鋭的に過ぎるし、物語は脈絡を離れて自由過ぎる。久々に古川日出男読んだけど、かつて魅了された『13』『沈黙』『アラビア』の記憶は美化され過ぎていただろうか、なんて考えてしまった。
あとがきで述べられる「サグラダ・ファミリア」という志向を聞いた後では、この小説の異形性が腑に落ちる思いもしたけど、それでようやく気付くようでは、やはり俺はこの作品を味わえていなかったのだろう。我が故郷も大いにフィーチャされてることだし、いつか再挑戦しようか。
評価はC。

聖家族(上) (新潮文庫)

聖家族(上) (新潮文庫)

聖家族(下) (新潮文庫)

聖家族(下) (新潮文庫)