ネタバレ注意。
娘を殺され、家族や仕事のすべてを失った男が、思わぬ運命に巻き込まれていく、クライム・ノベル。
投げ遣りに達観しながらも、その言葉と行動に筋が通って凄味のある「ヒトでなし」、尾田の造形に出色の説得力。歯に衣着せぬ語りに、コワレた人々が惹きつけられていく様子、カルト宗教や自己啓発セミナ的な、マインドコントロールや人格再構成の現場を覗き込むようでうすら寒くなります。
犯罪とは、宗教とは、善悪とは…大部の多くを「ヒトでなし」と周囲の人々との問答が占め、まどろっこしく感じる部分もあるけど、その後急速にドライヴする物語でその実践を見せつけられる。ド正面から宗教にぶつかりにいっただけのことはある、本格派の筆力を感じさせる作品。
『死ねばいいのに』もそうだったけど、京極の現代ものは骨太やなー。「胎蔵界の章」も楽しみだわ。
評価はB。
- 作者: 京極夏彦
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2019/02/28
- メディア: 文庫
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