ネタバレ一応注意。
ショパン、ドラクロワ、ジョルジュ・サンド…19世紀パリの社交界を舞台に、そこに生きる芸術家たちの人生を描いた歴史小説。
二五〇〇枚の超大作。至上の芸術を創造しながらも、人間関係の軛にもがき、恋愛に煩悶し、病に斃れていく人間としての彼らの姿。厳密な考証に基いた事物・心情が、視点を連続的に変えながら描写され尽くし、そしてまたそのひとつひとつが、徹底的に吟味された文章に拠っている。質量兼ね備えて、気の遠くなるような細密さと濃密さの宿った、「古典的小説」という創造物。
正直読み手のキャパシティの問題で、「面白い」という感情はそう湧いてこなかったが、ひたすら「凄い」という畏怖の感情に支配される。雑誌初出段階で作者は二五歳だったようだが、表現者の成果をその年齢で測るのは浅薄な無意味だと分かっていても、それでもやはり「天才だ」と呟かずにはいられない、そんな「天才たち」の物語。
評価はB。
- 作者: 平野啓一郎
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