倉知淳『片桐大三郎とXYZの悲劇』文春文庫

ネタバレ注意。
引退した名優・片桐大三郎が、趣味で様々な事件を解決する連作短編集。2016年版本ミス2位。
タイトルの通りドルリー・レーン四部作の本歌取り、ラストにはそれを逆手に取った仕掛けもあり、各編もそれぞれ中編クラスのヴォリュームで、プロット・伏線などなど作り込まれた本格派。本ミス2位もむべなるかな。
倉知らしいユーモアも基調をなしてありはするが、俺は勝手な事前の期待でもっとカジュアルなものを想定していて、ちょっと重厚長大の気味を感じてしまい、正直に言って食傷した。本格としてのディテールの充実と一体であるからして、これを冗長とまで言ってしまうのは良識に欠けるとは理解していますが。
「夏の章 途切れ途切れの誘拐」の、鮮やかな伏線回収/不可解状況解決→犯人「名」同定が一番印象的だったが、どっちかっつーと飛び道具で、プロットの骨子をなすものではないな…。
評価はC+。