翔田寛『消えた山高帽子』創元推理文庫

ネタバレ注意。
明治六年、横浜の外国人居留地とその周辺に起きるジャポネスクな事件に、駐日英国人新聞記者、チャールズ・ワーグマンが挑む連作。
仇討ちだの切腹だの歌舞伎だの、文明開化期の異文化交流ならではの題材に、シェイクスピアやホームズものを本歌取り的に取り入れるなど、多彩なアイデアとプロットを愉しめる連作です。特に「ジェントルマン・ハラキリ事件」の着衣の伏線なんて見事で、日本文化の再発見という一つの眼目を表現して秀逸の一品だと思います。
この舞台設定とプロットの志向であれば、山口雅也『日本殺人事件』までは極端だとしても、もっとジャポニズムカリカチュアしても面白かったんちゃうかと思うけど、この真面目な感じも作風なんだろうな。
評価はC+。