E.サンダース/小鷹信光(訳)『ファミリー』草思社文庫

ネタバレ一応注意。
チャールズ・マンソンによる「ファミリー」の結成(?)から、「テート=ラビアンカ事件」と逮捕までを描くノンフィクション。
「ファミリー」と、それに関わる人々に関して、非常に詳細な「事実の羅列」が延々と続く。心理描写や文学的な編集作業の介在しない、乾燥した事実の圧倒的な量感。正直に言ってかなりうんざりするところはあるが、その中からチャールズ・マンソンという男の不可知性が浮き上がってくる、異形の叙事詩としての凄味は感じられる。
白眉はやはりポランスキー邸での殺人描写。迫真性・残酷性はいたずらに煽られないが、それだけに不可逆の事態が不可知のままに進行していく、得体の知れない恐ろしさがあった。
評価はC。

文庫 ファミリー上: シャロン・テート殺人事件 (草思社文庫)

文庫 ファミリー上: シャロン・テート殺人事件 (草思社文庫)

文庫 ファミリー下: シャロン・テート殺人事件 (草思社文庫)

文庫 ファミリー下: シャロン・テート殺人事件 (草思社文庫)