J.ダイアモンド/倉骨彰(訳)『銃・病原菌・鉄』草思社文庫

ネタバレ一応注意。

現在の世界がなぜこのような不均衡の下にあるのか、その所以を13,000年の歴史を辿って解き明かす人類史。

農・畜産、言語、技術…様々な資料を詳細に、縦横に駆使して語られる人類史は、正に「科学としての歴史」というタームに相応しい。そして根本のロジックは明快で分かりやすいため、この満艦飾たる資料の海も、さして混乱することなく渡っていける。

世界の不均衡が、結局地理的要件と偶然にその多くを因っているというこの説得力ある分析は、その解消など考えもせず、むしろより促進しようという厚顔が蔓延る、嘆かわしい分断の時代にあって、より重く、広く膾炙すべきものであると思う。

評価はB。