J.カーリイ/三角和代(訳)『デス・コレクターズ』文春文庫

ネタバレ注意。

シリアル・キラーの「聖遺物」を扱うブラック・マーケットが絡む連続殺人に、米アラバマ州モビール市警《精神病理・社会病理捜査班》が挑む長編。

マンソン・ファミリーを彷彿とさせるミッシング・リンクの設定、「聖遺物」のアイデアというあたり、好みドンピシャのケレン味だった。ハリーやディーディーといったキャラクタたちも魅力的で、エンタテインなサイコ・サスペンスとして非常に愉しみました。真犯人「カリュプソ」の設定が意外性に欠けるところがあるけど、それはカーラの方を疑ってた負け惜しみかもしれないし、ウィロウがつけた決着は、刑事ドラマとしてもめちゃくちゃアツかった。

そうしたフリーキィなミステリとして充分に愉しんだのに、ラストに至ってトレイ・フォリエという存在が、それまで露悪的に玩弄され続けた「アート」というものの価値を照射して感動的、いわく言い難い、深みのある読後感に包まれます。

傑作と思います。これがウワサのカーリイか、と思いました。売るどころかシリーズ読まなかんわ。

評価はB+。

デス・コレクターズ (文春文庫)

デス・コレクターズ (文春文庫)