D.ゴードン/青木千鶴(訳)『二流小説家』ハヤカワミステリ文庫

ネタバレ注意。
うだつのあがらない小説家が、あるシリアル・キラーの自叙伝の執筆を依頼され、それによって連続殺人に巻き込まれる、というサスペンス。
ストーリィのテンポ、スピード感は抜群だし、キャラもよく立っている。特にクレアは出色で、ハリーに宛てた手紙は俺も泣きそうになったわ。RX738との出会いや、テレサとの関係性など、ハリーの小説家としての自己承認に至るエピソードはどれもクリティカルだし、端的にアツい。
エモーショナルで、よく出来ていて、好感度も高いサスペンス小説だけど、しかし目を見張るようなプロットの妙や、他の作品から抜きんでたもの、新しさを見出すことはできなかったかな。年度のランキングは総ナメにしてたような気がするけど、こういう「よく出来た小説」がそう持ち上げられるってのは、少なくとも新奇性、斬新さという部分で、昨今の翻訳ミステリってのは豊穣な地平を見ていないんだろうな、とは思う。
評価はB−。

二流小説家 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕

二流小説家 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕