芦辺拓『不思議の国のアリバイ』光文社文庫

ネタバレ注意。
「大怪獣ザラス」なる特撮映画の周辺に起きる殺人事件に挑む、森江春策シリーズの長編。
メイントリック、被害者の顔が焼かれていたホワイダニットは、映画業界という舞台立てと馴染んで、まとまりのいいプロットだったと思う。
しかし地名の同一性にまつわるアリバイトリックはどこまでオリジナリティを認めていいものか微妙なところだし、あからさまに怪しいある登場人物の絡ませ方なんかも、恋情と激情の説得力において、あまりいい手つきではない*1
あとは題材への思い入れが、あまりクレバーでない噴出の仕方をしているところも散見されて、もったいないなあ、という感想が先に立つ作品でありました。作品つーか、作家としてそう。
評価はC+。

不思議の国のアリバイ (光文社文庫)

不思議の国のアリバイ (光文社文庫)

なんか再読のような気もするんだけどな…。

*1:関連してラストシーンはとってつけたようで、お寒いお花畑の風景。