東野圭吾『回廊亭殺人事件』光文社文庫

ネタバレ注意。
回廊で部屋が繋がれた特徴的な構造の旅館で、遺産相続をめぐる殺人事件が起こる長編。
タイトルにまでした建物の構造、それに伴う論理展開がスムーズにのみこめなかったし、叙述トリックについても効果的に用いられていないなど、プロット・演出の瑕疵は多いと思う。
しかし一面では『ミセス・ダウト』的展開には倒叙ものとしての妙味*1があり、クライマックスの唖然とする転回に不覚にもワクワクしてしまった。
もっとコミカルかつポップなものにした方が作品のテイストは取れたような気もするし、完成度・洗練性の点では物足りないけど、野心の見える怪作と思います。
評価はC+。

回廊亭殺人事件 (光文社文庫)

回廊亭殺人事件 (光文社文庫)

*1:髪の毛をめぐる展開もシンプルかつスリリング。