佐野眞一『東電OL症候群』新潮文庫

ネタバレ特になし。
『東電OL殺人事件』の続編。裁判の流れとか、(特に女性)読者の共鳴の様子とか。
一番力の入った、「冤罪」を生んだ司法に対する弾劾は確かにその通り*1なんだけど、結局一番面白かったのは前作に引き続いて被害者像の掘り下げの部分であって。テンション上がって前作引っ張り出そうとしたら売ってたわ…痛恨。
しかしまた、日本猟奇事件史引っくり返してしまいたくなるよ。この事件についてはその中でも「名被害者」部門では屈指の存在だべな。記憶もだいぶ薄れてたけど、律義に終電で帰ってた、って事実は再確認であれ特に印象深かった。家族に対するあてつけってのは心象の中にかなり大きかったんだろうな…「闇が深い」なんて常套句はあまりに陳腐で矮小だけど、個人の心象も、それが生きて育まれた街の景色も、そうとしか言いようのない深淵であって。
評価はB。

東電OL症候群(シンドローム) (新潮文庫)

東電OL症候群(シンドローム) (新潮文庫)

*1:まあでも、最終的に無罪確定してよかったよね。よくはないけど。