皆川博子『開かせていただき光栄です DILATED TO MEET YOU』早川書房

ネタバレ注意。
18世紀ロンドン、解剖学教室を舞台にした歴史ミステリ。
年次ランキング席巻のこちら、皆川作品中でもエンタテインメント性は随一です。御齢八十二にしてこのハジケっぷり、この人と荒木飛呂彦だけは吸血鬼だと思っております。
ヴィクトリア朝ロンドンの猥雑を捉えた歴史小説的興趣、解剖学教室の面々や捜査陣のキャラクタの立ち、本格としてのケレンと計算されたどんでん返し、完成度の高いエンタテインメント本格です。
皆川博子でこの時代なら、もっと暗黒性は高くていいのではないかと思いもしましたが、その分は本格としての端整に比重がおかれているという見方もできましょう。特に四肢切断のロジック、神学的な議論や、印象的な監獄場面との関連を経て、実は最もシンプルな理由に落ち着くという解決の手つきには感じ入りました。
評価はB。