高村薫『マークスの山』講談社文庫

ネタバレ注意。
直木賞受賞作だし、代表作という見方をされていると思う、多分。
人気も評価も得ている作家だとは思うのだけど、俺にはこの作家の魅力がまったく分からない。
警察小説という脈絡があったのでこないだのよりはまだ読めたけど、描かれる事件もその背後の秘密も、作家が狙ったであろう小説としての重厚さに比してあまりにせせこましいと思ったし、あるいはもう一つの軸、「マークス」の独特のキャラクタも、凄みも哀しみもまったく感じられなかった。頭で一生懸命考えて、一生懸命言葉で飾った、そういう堆積、結果としての大作として、俺には読めてしまった。
それはまた、必死で「キャラ立ち」させられた刑事の皆さん*1もそう。だけど一方で、下巻の〆間際で突然《山とはなんだろう》(下巻335p)とか言い始めて、あげくラストは山から富士山見えて〆、なんておざなりなエンディングには唖然とした。まさかの富士山オチはともかくとして、タイトルにまで掲げたメタファ、700pも読ませてから問い始めるな、せめて回答しろ、と思いました。
合田と加納の関係性に見られるような、BL的想像力も相変わらずで、そもそも生理的に合わないんだと思います、申し訳ない。
評価はC。

マークスの山(上) (講談社文庫)

マークスの山(上) (講談社文庫)

マークスの山(下) (講談社文庫)

マークスの山(下) (講談社文庫)

*1:この類の警察小説でいつも思うけど、彼らはもっと仲良く仕事できないのかな?