探偵小説研究会(編著)『2012本格ミステリ・ベスト10』原書房

ネタバレ特になし。
1位の米澤穂信『折れた竜骨』と3位の皆川博子『開かせていただき光栄です』は鉄板であろうと思っております。発注かけてるんだけどなかなか入ってこない…。
2位はやはり走りすぎたか。気になっていた6位も読んだところなので、久々の城平京をどうするかだな…都市伝説ネタでモロ好みっぽい。あとまほろの健筆も嬉しいところだし、倉阪バカミスにも惹かれる。まあこの辺はおいおい。
さて、ですが個人的な見所はやはり2000年代の短編ベスト企画ですね。1位は当然の上にも当然で、大いに溜飲を下げました。未読では梓崎優「スプリング・ハズ・カム」*1道尾秀介「流れ星のつくり方」、大山誠一郎「彼女がペイシェンスを殺すはずがない」*2あたりが好みと見た。
では、ワタクシもやってみます。1位は当然としてその他にも「イコールYの悲劇」とか「ヒュドラ第十の首」とか法月だらけになってしまうので、一作家一作品縛りで。
では…

1. 法月綸太郎「都市伝説パズル」(『法月綸太郎の功績』講談社文庫所収)
2. 柄刀一「アリア系銀河鉄道」(『アリア系銀河鉄道光文社文庫所収)
3. 横山秀夫第三の時効」(『第三の時効集英社文庫所収)
4. 梓崎優「砂漠を走る船の道」(『叫びと祈り東京創元社所収)
5. 北森鴻「苦い狐」(『瑠璃の契り』文春文庫所収)
次点 森博嗣「いつ入れ替わった?」(『虚空の逆マトリクス講談社文庫所収)

1はもう文句なし、論理美の極北、本格ミステリイデアを示す全人類必読の名作です。2は「ゴーレムの檻」を推す声が多かったけど俺はこっちのが遥かに好き。ダイナミックでロマンティックな柄刀ワールドの魅力全開。他の作品(とそもそも文章)がいかに肌に合わなかろうが、この作品のおかげで俺は柄刀に期待し続けられる。3は警察小説の衣をまとったド本格の連作から。表題作はキャラ立ちすぎで印象がいい部分もあるが、カタルシスも満点。4は「凍れるルーシー」と迷うところだが、劈頭のインパクトをかって。今最も次作が待たれる作家であろう。5と次点は正直目新しいところで、好きな作家を入れたかったというのはある。共にシリーズ中重要な作品だが、シリーズとしての仕掛け・位置付けを離れて「本格」としてどうか、というと俺自身が疑問ではあるがw
この本で大矢博子やクロケンがさすが仲良しだけに同じこと言ってたけど、なんか忘れてそうだよな、という隔靴掻痒感がもどかしい。麻耶も入れたくて、「こうもり」でもよかったけど、『メルカトルと美袋のための殺人』(期間外)に受けたインパクからしたらどうしても弱い気がしたし、島荘は最近中編クラスが多いし「IgE」なんかは初出年が微妙だった。
絶対なんか、俺だけが偏愛してる短編が残ってそうな気がする。まとまった資料が欲しいぜ…。
大いに楽しんで、評価はB。

本格ミステリ・ベスト10〈2012〉

本格ミステリ・ベスト10〈2012〉

*1:所収のアンソロジー買ったった。

*2:タイトルいいよね。アンソロジー持ってたはず。読も。